ヘッドホンレビュー第5弾はフォステクスの密閉型フラッグシップTH900を紹介します。
記事の要約
特徴 : テスラテクノロジーを超える1.5テスラドライバ搭載
ヘッドホンに少し興味がある方でも、「FOSTEX(フォステクス)」の名を知っている人は少ないのではないでしょうか?
実際、わたしもTH900を知るまで知りませんでした。
「FOSTEX(フォステクス)」は設立1948年の日本のOEM(委託者のブランドで製品を生産すること)音響メーカー・フォスター電機の社内カンパニー&ブランド名です。
そのフォスター電機のOEM供給先がなかなかスゴい。
ゼンハイザー、ソニー、ヤマハ、デノン、ノキア、Beats へスピーカーやヘッドホンを供給。
アップルの携帯音楽プレーヤーiPodや携帯電話iPhoneなどのヘッドホンを供給。
フォスター電機
Wikipedia
実力派って感じです。
そんなフォステクスのフラッグシップ機がTH900。ヘッドホン沼の終着点の1つです。
業界最高の1.5テスラドライバ・高級材「水目桜」から作られる木製ハウジング・ハウジングは漆塗りと、最上位モデルにふさわしい贅沢仕様。
インピーダンスは25Ωなのでヘッドホンアンプは不要な点も嬉しいところ。
外観及び装着感
▼高級感、あります。イヤーパッドも肉厚。
公式HPのハウジング部の説明です。何かスゴい。
老舗「坂本乙造商店」による「漆・ボルドー仕上げ」のハウジングカバー。使われている漆は、ベースとなる黒漆と箔貼用の接着漆。奥行き感を最大に見せる部分には、硫黄でいぶした、何種類もの色銀箔を、ちぎり絵の様に貼りこみ。FOSTEXロゴはプラチナ箔貼り
TH900 | FOSTEX
▼サイズ調整はアームから伸びた2本の金属棒内側の凹みで行います。
サイズを変更する度に、「カチッ。カチッ。」となめらかな音がし、T1とは違う国産のクオリティを見せつけてくれます。
▼ハウジングが側頭部に沿う様に動き、卵由来のプロテイン配合で心地よい肌触りを実現したというイヤーパッドが優しく耳を包んでくれます。
この肌触りの良いイヤーパッドのおかげで装着感は非常に良いです。
ただ、約400gと重量があり、その重量の大半を木製のハウジング部が占めているので、気分がノって頭を振るとハウジングがズレます。。
頭を振らない人は問題ありません。
解像度(音の明瞭さ・クリア感)
ヘッドホンの解像度をYoutubeの解像度に例えるレビュー方法でのTH900の評価です。
ウォークマンNW-F887付属のイヤホンを144p相当とすると、
TH900の解像度は2160p相当です。
4k。超最高ランク。
それぞれの楽器の動きまでもがわかる(気がする)。ギターの弦の震えがわかる(気がする)。
実際、わかるかどうかは別としてそんな気分にさせてくれる解像度です。
T1よりも脇役の音が聞こえやすいです。
T1でも確かに聞こえますが、TH900で曲を聞いて「あれ?こんな音入っていたっけ?」と気づき、T1で聞いてみると「あぁ、小さいけど確かに入っているな。」という流れ。
ヘッドホン沼にハマったきっかけであるモニター用ヘッドホンMDR-Z1000を使った時と同じ感覚。
T1との解像度の差は、ドライバとハウジングの差もありますが、密閉型と開放型の差の影響が大きいのではないかと思います。
一般的に密閉型の方が、音場の広さと引き替えに精細感が出ると言われています。
ただ、まぁ、フルハイビジョンと4Kぐらいの差なので1080pのT1でも充分です。
今のテレビと同じでフルハイビジョンより上は趣味の世界。
クリア感に関してはT1の方が上です。
音の味付けがT1よりは柔らかく暖かいので、「まっすぐドコまでも遠くへ」という感じのT1とは方向性が違います。
もちろんT1よりもクリア感が無いと言っても、決して不明瞭ではありません。
音場の広さおよび特徴
▼T1よりは狭まりますが、ステージは頭の外まで続いています。
よって基本的な感想はT1をご参照。(手抜きじゃないよ。もう差がわからないだけです。)
密閉型ですが、こもり感は全くありません。
音の定位および分解能
▼もはや書くまでも無いかも知れませんが完全に分離。
分解能はT1以上。
複数人で同じ歌詞を歌うユニゾンパートの際、T1では声が重なり、1カ所から発声されるので、一人一人誰が歌っているのかが認識しづらいです。
しかし、TH900では一人一人の声が分離した上で重なるのでそれぞれを識別可能となり、ユニゾンの「声の厚み」として表現されます。
このユニゾン感が表現されることがT1を持っているにも関わらずTH900を買い増した理由の1つです。
音の傾向
低音寄りのフラット。
低音はテスラテクノロジーに量が加わった感じです。
低音は締まっており、音の締まり、立ち上がり、キレはT1とあまり差は無いように聞こえます。
しかし、T1にはなくてTH900にあるものがあります。
それは圧倒的な音圧。
全ての音が濃く、試聴し始めた時に、「マジかよ。。。」と思わず笑ってしまう程。(買い増し理由2つ目)
よって、バスドラムは「ドッッツツ!」。キレに音圧が加わり、若干柔らかい感じ。
ライブ音源を聞くと、現場の重低音を思い出します。
(ライブでは盛り上げる為に、CD音源よりも重低音を盛ることが多い)
ボーカルはT1よりも遠く、演奏の中に引っ込みます。
これはボーカルが下がるというより、演奏が前に出てくることにより、相対的にボーカルが引っ込んでいるイメージになると書いた方が正確です。
ボーカルをあくまでも曲の一部として楽しみたい場合、このヘッドホンが最適です。
これが買い増し理由の3つ目です。
音圧があるのでノリを楽しむ聴き方からモニター的な聴き方もできるので、大衆音楽から芸術音楽まで対応可能と言えます。
総括: 超解像でありながら、迫力のある音圧とキレでノリよく音楽を楽しめる
TH900は、開放型の音場と音の定位、モニター用ヘッドホンMDR-Z1000の超解像度、HD25-1Ⅱの音圧と低音の量、テスラテクノロジーのレスポンスとキレと、これまでわたしが所有してきたヘッドホンの良い部分を合わせた様なヘッドホンだったので、ヘッドホン沼の終着点と決めました。
人それぞれの好みによって、終着点は変わります。
是非一度試聴してみて、奥深いヘッドホンの世界をご堪能下さい。
以上!アイドリングタイムのイド♂(@idomars)でした。
ありがとうございました!
~~編集後記~~
「なんだ、結局は良いところの寄せ集めのヘッドホンかい」とお思いの方。
ヘッドホンは、それが難しいのです。
ドライバの大きさによる特性や密閉型・開放型の特性からわかるように、どこかの特性を良くすると、どこかが必ず犠牲になる。
各特性を高いレベルで保つ、イイとこ取りが一番難しい。
TH900やT1などのヘッドホン沼の終着点と呼ばれている機種は、それを実現しているところがスゴいのです。
個別レビューはあと一回続きます。